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民法改正を簡単に分かりやすく説明(債権法)
2020年4月から改正民法(債権法)が施行されますが、民法(債権法)のどういった部分が改正されるのか、よくわからない方がいらっしゃるのではないでしょうか。
債権は経済活動の根幹に関わるとても重要な事項。
ビジネスパーソンにとって知らないでは済まされません。
まずは簡単に民法の構成を説明
民法は、総則、物権、債権、親族、相続の5つの編に整理されています。
第1編 総則・・・民法共通の部分
第2編 物権・・・物に対する権利
第3編 債権・・・人に対する権利
第4編 親族・・・親族間の関係
第5編 相続・・・相続に関する事例
債権法とは、形式的には民法の第3編債権を指します。
債権法はビジネスパーソンにとって重要
債権法は社会や経済の活動に大きく関わってきます。
保証や契約をする際には、民法(債権法)の改正を踏まえておかないと不利益を被る恐れがあります。
ここでは比較的日常生活と関わる
・契約不適合
・保証
・約款
・法定利率
・消滅時効
・賃貸
について簡単に分かりやすく改正内容を説明します。
契約不適合に関する改正
契約不適合とは、売買の目的物の種類、品質、数量に関して契約内容に適合しない場合を指します。
瑕疵担保責任から契約不適合責任へ変更
改正前の民法には、売買の目的物の隠れた瑕疵に対する売り主の責任が「瑕疵担保責任」として規定されていました。
・契約の趣旨や社会通念などの黙示的な合意から外れたこと など
しかし、この「瑕疵」の定義については明記されていませんでした。
契約不適合責任とは
2020年からの民法(債権法)改正施行により、瑕疵担保責任から契約不適合責任としました。
契約不適合責任とは、売買契約の内容に適合しないものについて、売り主が責任を取るものです。
例えば、通常有すべき性質・性能を備えていない目的物の売り主は、当然、買い主に対し契約不適合責任を負います。
瑕疵担保責任の場合、通常有すべき性質・性能を備えていない目的物であっても、そのことを買い主が確認し、当然分かっていたときは、隠れた瑕疵とならず、売り主の責任は認められませんでした。
ところが、契約不適合責任の場合は、契約内容に適合しているか否かで判断されるので、売り主の責任となるのです。
保証人の保護に関する改正
保証契約とは、借金の返済などを負う「主債務者」が支払をしない場合に、代わりに支払することを約束する契約をいいます。
極度額(上限額)の定めのない個人の根保証契約
これまで、賃貸借や継続売買取引などにかかる根保証契約が問題となってました。
例えば、借家が借主の落ち度で焼失した場合、その損害額が保証人に請求されますが、想定外の多額の保証債務となる事例は少なくありません。
2020年からの改正施行により、
・極度額(上限額)の定めの義務付け
・主債務者の死亡や、保証人の破産・死亡など特別事情がある場合の根保証の打ち切り
について、すべての根保証契約に適用されることになりました。
公証人による保証意思確認手続きの新設
法人や個人事業主が事業用融資を受ける場合に、その事業に関与していない親戚や友人などの第三者が安易に保証人になってしまい、多額の債務を負うことがあります。
2020年からの民法(債権法)改正施行により、経営者以外の個人が保証人となる場合、公証人が意思を確認する手続きが導入されました。
この手続では、保証意思宣明公正証書を作成することになるのですが、手続きを代理人に依頼することができません。
約款(定型約款)を用いた取引に関する改正
これまで、民法には約款を用いた取引に関し、基本的なルールが何も定められていませんでした。
このため、顧客が約款内容を確認せず不利益を被る可能性がありました。
一方で、個別に一人ひとりに同意を取ることは不合理で利便性を損なう可能性もあります。
2020年からの民法(債権法)改正施行により、このような実情を踏まえ「定型約款」に関して、次のようなルールを新しく定めました。
定型約款が契約の内容となる要件
①当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意がある
②取引を実際に行う際に、定型約款を契約の内容とする旨を顧客に「表示」する(取引を実際に行う際に、顧客である相手方に対して定型約款を契約の内容とする旨を個別に表示することが必要です。)
①や②が満たされると、顧客が定型約款にどのような条項が含まれるのかを知らなくても、個別の条項について合意をしたものとみなされます。
一般的な事業者間取引で用いられる一方当事者の準備した契約書のひな型、労働契約のひな形は該当しません。
約款によって画一的な取引をすることが事業者側・顧客側双方にとって合理的であると客観的に評価することができる場合に、定型約款は限定されます。
定型約款の変更の要件
長期にわたって継続する取引では、法令の変更や経済情勢・経営環境の変化に対応するため、定型約款の内容を事後的に変更する必要が生じます。
実際に同意がなくても変更可能としますが、顧客の利益保護の観点から、同意なしで変更できる場合を次にように限定しています。
①変更が顧客の一般の利益に適合する場合
②変更が契約の目的に反せず、かつ、変更に係る諸事情に照らして合理的な場合
法定利率に関する改正
まず法定利率とは、契約の当事者間に貸金等の利率や遅延損害金(金銭債務の支払が遅れた場合の損害賠償)に関する合意がない場合に適用される利率のことを言います。
法定利率の引き下げ
2020年からの民法(債権法)改正施行により、定利率を年5%から年3%に引き下げました。
また、商事法定利率を廃止し、商行為によって生じた債務についても、民法に規定する法定利率を適用します。
法定利率の変動制の導入
2020年からの民法(債権法)改正施行により、将来的に法定利率が市中の金利動向と大きく乖離することを避けるため、市中の金利の変動に合わせて緩やかに上下させる変動制の導入し、3年ごとに法定利率を見直します。
消滅時効に関する改正
2020年からの民法(債権法)改正施行により、消滅時効期間について、より合理的で分かりやすいものとするため、職業別の短期消滅時効の特例を廃止するとともに、消滅時効期間を原則として5年としています。
消滅時効期間は原則5年ですが、時効が10年となるケースがあります。債権者自身が自分の権利を行使することができることを知らないようなケースです。
(時効5年にならない債権の例)
・物に対する不法行為に基づく損害賠償請求権 時効3年
・裁判の判決で得た債権 時効10年
賃貸借に関するルールの確立
これまで、民法にはアパートなどの賃貸借契約の際の「敷金」や「原状回復」についての基本的なルールを定めた規定がありませんでした。
2020年からの民法(債権法)改正施行により、市民生活に多くみられる「敷金」や「原状回復」のトラブルの解決指針となるルールを民法に明記することになりました。
敷金の基本的なルール
賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに、貸主は賃料などの債務の未払分を差し引いた残額を返還しなければなりません。
原状回復義務の基本的なルール
通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗) や経年変化については原状回復をする必要はありません。
最後に
民法改正を簡単に分かりやすく説明してきましたが、詳しく調べたい場合は次の図書が参考になるかもしれません。
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